ここインドのプリーを訪れた理由は二つあった。 一つは、ツーリストオフィスで働く友人スサントとの再会。 そしてもう一つは、行きつけにしていたオムレツ屋の親父との再会。 プリーは海岸に面し、リゾート地としての顔と、インドでも最大級のヒンドゥー教寺院、 ジャガナート寺院が建立する地としての顔をもつ。 しかし、6月から8月がインド人すら嫌がるほど、くそ暑く、ツーリストの数は激減する。 6月の初めと終わりに行われるビックフェスティバルを除いては、、、。 オムレツ屋のおやじは、私の事をよく覚えていてくれた。 そして3年前のようにチャイ(ミルクティー)を頼み、お互いの事を話した。 2年前に台風で飛ばされて、中古の木ばかり集めてこの屋台を作ってもらったと言う。 そう言えば、移動式だった屋台の車輪は見当たらず、虫食いの板がやたら目立つ。 おまけに一つのベンチは腐って壊れたまま放置されている。 “日本人も通るのだが、こう汚くて小さい店だと見向きもしない。”と言う。 一肌脱ぐことにした。英語と日本語で看板を書くことにしたのだ。 セールスポイントは一杯2ルピー(6円)のチャイ。これを日本語で書き、 最後に“ほんとに安くておいしいよ!”と書き添えた。 翌日から、ぼちぼちと日本人が訪れるようになった。 屋台で一緒になった日本人が言った。 “この店安くて美味しいのに、なぜ流行ってないのですかね?” この店を、気に入っているのは自分だけじゃないと思うと嬉しくなった。 10年前には小さなキャビンで店をしていたが、漏電が元の火事で店を失ったらしい。 “まじめに働いていれば、神様はちゃんと見ている。 ほら、こうやってお前が助けてくれただろ。“と、のんきなことを言っているおやじが大 好きだ。 ベンチも修理してあげたかったが、道具がない。仕方なく家具屋へ行き、ベンチをオーダ ーした。 それから、オムレツやチャイはタダになり、奥さんが作ってくれた夕食などもよばれた。 なにやら悪い気がしたが、好意に甘えることにした。 “次に来たときは、俺の実家へ行こう。ここから30Kmほど離れたところだ。 近くには、海があり山もある。きれいなところだ。“ 嬉しいことを言ってくれたが、果たして次にいつインドを訪れるか自分でもわからない。 |