午前3時、駅のホームにへたり込み、チャイを啜る。 夜行列車の移動で疲れた身体に、甘いチャイは優しく染み込んでいく。 少し早いが、ガンガー(ガンジス河)で日の出を見るにはいい時間に到着した。 周りには列車待ちの無数のインド人達が寝そべって、 薄暗いホームは、まるで死体置き場のようにも見えて来る。 しかし、インド人達には感心する。どこででも寝るのだから。 店の軒先やカウンター、大通りの中央分離帯の上、リクシャのシート、歩道橋。 よそ見をしていると踏んづけてしまいそうになる リクシャを捕まえ、いや、捕まり、ガンガーのガート(沐浴場)へと向かうが、やはりま だ早い。インド人たちも道端で眠っている。 白々と夜が明けかけたガートの少し高台に陣取って、またチャイを啜りながら日の出を待 った。 ここバナラシは、少しインドの知識のある人なら、必ず知っていると言うほど有名な土地。 ヒンドゥー教の聖地でもある。 老人はここを死に場所と定め、ゆっくりとした時の中で死を待つ。 火葬場では薪の上に置かれた死体が焼かれ、旅人は目を奪われる。 何百年、何千年変わってないだろう迷路のような街。 すべてがマッチしてこの幻想的な雰囲気を醸し出す。 不思議な街、バナラシ。 薄い紫、ピンク、なんとも言えぬ色を発しながら、太陽が顔を出す。 と同時に一斉に鐘の音が響きわたる。 ガンガーでは、インド人達が沐浴をしている。 沐浴といっても皆が神聖な趣を持っているのではない。 腰にペットボトルやポリタンクを結びつけ、無邪気に水遊びをする子供達。 奇声を発しながら水を掛け合う者。 それらを眺めながら、時の過ぎ行くのを楽しむ。 |